123時間目「本番直前大騒動!!」


あらすじ

 亜子にネギが控え室で遭遇してしまう数時間前、小太郎はネギたちに合流し再戦を誓うことで、立ち直ることができた。

 亜子が見られたのは、背中の傷、女の子として一番見られたくなかったところ。

 彼女は立ち直ることのできない心の傷を受け、その場だけでなく、ライブからすらも逃げ出す結果となってしまった。

 そんな自分に激しい悔恨の念を抱いていた彼女の前に現れたのは、王子様か、はたまた魔法使いか……。


評価

 ★★★★★


感想

 は釘宮が好きだ。
千雨が活躍する話も好きだ。
千雨自身が好きかどうかはまた別問題だ。
いや、好きだけど。
そんな私だが、実は個別のキャラ云々よりも、ヒロインたちが生き生きと動いている話が大好きだ。
だから、今回の話も大好きだ。

 回の話に引き続き、亜子をメインに周辺のキャラクターを描くいわゆるクラスメイト編です。
このシリーズのキーアイテム(?)は、亜子の人格形成のネガティブな部分に大きく影響していると思われる背中の大きな傷です。
前回のラストで、彼女が誰にも(自分自身にすら)見られたくなかった傷を、よりにもよって好きになった相手(15歳の姿をしたネギ)に見られてしまった彼女は、昔そうだったように、また好きな人に嫌われたと考えてしまい、逃げ出します。
そして、途中で転んだ際に創った傷口から出た血を見て、気を失ってしまいます。
気がつくと、既にライブの時間は終わり、祭りのあと。
何もかもうまくいかなかったことに絶望する彼女の前に現れたのは、自分のことを嫌ったと思っていたはずのネギ15歳。
彼女に魔法がかけられようとしている。
……というのが、この話の背骨。
読者諸氏は、これからネギがカシオペアを使うことを知っています。
これで、彼女が失った時間は取り戻せます。
でも、失った心は、どうなるでしょうか。
それが、次回に残されたテーマであると言えるでしょう。

 う少し補足を。
彼女が血を見て気を失ったのは、背中にある傷とも当然関係があるでしょう。
厳密に言えば、傷ができた時のトラウマから、血を見ると気絶してしまう体質になってしまったのです。
そんな彼女が保健委員をやっているのは設定的には笑い所だったりしますが、今回のシリアスな展開の中では、笑えたものではありません。
彼女の嫌いなものに、”血”と”ケンカ”が挙げられていますが、釘宮がネギをひっぱたき、小太郎をぶん殴ったのを亜子が止めたのも、彼女のケンカが嫌いという性格を反映したものです。
傷は1巻で既出ですから、こういったストーリーは、連載当初から想定されていたのでしょう。
このタイミングでこの話が出てきたのは、このストーリー(背骨)の脇を固めるキャラクターのキャラ立ちが十分にできたからと判断されたからに他なりません。
それが、釘宮と千雨です。
ネギは必須として、小太郎は話を盛り上げるためのかませ犬に過ぎません。
彼の女性に対する純粋ゆえの無理解さは、ネギのそれを更に肥大化させたものであり、無理解であることの罪を際立たせることに役立っています。

 では、釘宮と千雨が十分にキャラ立ちしたからこのストーリーを3話使ってじっくり描けているのだと書きましたが、最近大活躍だった千雨はともかく、釘宮の方は実際のところ、見切り発車の感が強いです。
ですが、これまでの連載で断片的に描かれていた彼女と描写にズレがなかったので、ファンとしては安心しました。
端的に説明を試みると、誰とでも適切な距離を保った付き合いができ、それでいて親身になれる子です。
彼女自身の話もぜひ読みたいですが、そんなキャラゆえ、今後もサブヒロインでの出番が多くなることでしょう。
しかも一般人限定で。

 宮が直情的な感情をネギと小太郎にぶつけたのと対照的に、一歩引いている千雨は、ここでは助言者(メンター)の役割を果たしています。
彼女がいなければ、7巻でネギがアスナとケンカした時と同じような展開が待ち受けていたことでしょう。
作品世界が、大きく広がり続けていることがわかる、いい例だと思います。
千雨が小さい状態でいるのも実はミソで、そうでなければ釘宮はネギたちをひっぱたけたかわかりませんし、それ以上に、亜子が今後千雨に対して負い目(引け目?)を感じなくて済むというカラクリもあったりします。
着ぐるみ状態の茶々丸も、大きくなっているネギも小太郎もまた同様です。

 頭にも書きましたが、次回の鍵は、亜子がコンプレックスをどのように克服するかにあります。
どこかで聞いたようなフレーズですが、魔法は万能ではなく、真に己を変えるのは……
ネギが適切なケアをするのか(できるのか)はともかく、最終的にはやはり、亜子自身にかかっているのです。
シンデレラである彼女に魔法をかけるネギは(亜子自身は知らないけれども)結局幻なのだから、彼女が一人で乗り越えていくしかありません。
今、心から亜子を応援したい心境です。

 …というのが、亜子を中心に見た感想です。
今回は、もう一層別の情景が繰り広げられているので、そちらも見てみましょう。
それが、亜子とネギの遭遇の数時間前に端を発する物語です。
前回の時点では空白になっていたエピソードが、ここで明らかになりました。

 ずは、武道会後はじめての、ネギと小太郎の会話。
連載時期がだいぶ前だったので忘れかけていましたが、小太郎はネギと大会で戦う約束を守れなかったことを、深く恥じていたのでした。
でも、不意に遭遇したことで、かえってすんなり、わだかまりはとけたようです。
お互い若いというか、バカというか……(一応褒め言葉です)
ここでもしっかりネギにフォロー入れる千雨、いい娘です。

 、小さくなった千雨が借りた衣装がまたとんでもないのですが(笑)
不意打ちを食らいました。
普段ロリ属性なんてないのに。
こ……これはやばいぞ自分(^^;)
フォトショップで修正かけなくても千雨理想のロリ幼女になるという、年齢詐称薬の機能が思わぬ形で作用しました。
あと、彼女が茶々丸にオシャレとは程遠い着ぐるみを着せたのは、もちろん面が割れないようにするためでもありますが、体を小さくされたことへのせめてもの復讐なのだと、個人的には解釈しています(笑)
水面下で地味な戦いを繰り広げている二人の関係、イイですよね。

 変わらずネギは紳士的に振舞えません。
前回の時点で、各所で散々指摘されていましたが、ノックの後に返事もしないで中に入るのは、少なくとも紳士ではありません。
と言うよりも、紳士っぽく振舞おうとしても、結局はちゃんとできなくて、紳士「的」にしかなれないと表現した方が正しいかもしれません。
普段からそういう面はありますが、実際に大きくなった姿で見ると、それが際立ってしまいます。
10歳で先生であるが故のアンバランスは、肝心なところでマイナスに作用してしまいます。
こればっかりは、話の中で成長していかなければなりません。
……と、過去の感想の中で何度も書いた気もするので、体力面はともかく、精神面はそう簡単に成長できるものではないということなのでしょうね。

 こで釘宮ですよ。
ネギと小太郎に鉄拳制裁です。
小太郎に平手打ちを止められた後赤くなってグーで殴り直すのがたまりません(何)
いまいち問題の本質を理解できていない二人を罵倒するのもたまりません。
何よりも、是非はともかく、とっさに友人を最優先した行動がとれた彼女に対して、素直に好感を抱くことができます。
これでコタ×釘の線が消えたけど、それはまぁどうでもいいや。
無理解な二人を諭す千雨は、クラスと積極的にはかかわろうとしていませんでしたが、誰よりも客観的にクラスを見ていたのが、印象的でした。

 て、打ちひしがれる亜子の前に現れたネギは、紳士というよりも王子様。
ネギにできることは、魔法をかけてあげること、それだけなのでしょうか。
次回、亜子編完結。


マフィアの御曹司とボディガードと小学生と着ぐるみロボットが織り成す話が読みたい

・亜子「ひ‥‥」・・・最悪の遭遇。
・ネギ「――でも千雨さん 色々とありがとうございます」・・・数時間前の話。
・ネギ「いえ 僕のこと色々と心配していただいて‥‥ ちうさんの言葉は とってもためになります」・・・素直な感謝。
・千雨「ハッ‥‥ そういや何でこいつをこんなに気にかけてんだ 私!? 全然カンケーねぇのに!!」・・・仕様です。
・茶々丸「千雨さん いいことをおっしゃいますね」・・・こちらも素直な言葉。
・ネギ「でしょー 僕 HPのファンなんですよ」・・・秘密がダダ漏れ。
・千雨「うるせぇっ カオ赤くなるのはクセなんだよ 仕様だっー」・・・はいはいツンデレツンデレ。
・ネギ&小太郎「‥‥‥」・・・気まずい瞬間。
・千雨「何黙ってんだよ バカ」・・・よく気付く子です。
・小太郎「‥‥ネギ わ‥‥悪かったな 約束‥‥守れへんで」・・・小太郎、またひとつ成長。
・ネギ「うん! コタロー君!!」・・・こっちはあまり変わってない。
・小太郎「アホ!! 一緒になんかするか!!」・・・コタローには楓がいますし。
・小太郎「つか その大人顔で笑うなや 気持ちワルイッ」・・・笑顔が気持ち悪いと色々な人に言われる主人公(笑)
・千雨「10歳のワリにはもろもろ問題多くて大変だわな ま 私にゃカンケーないが」・・・少し理解が深まった。
・ネギ「逃げます 千雨さん」・・・また。
・千雨「人の話を聞きやがれ―――っ!! 降ろせっつーんだ!!」・・・仕様です。
・茶々丸「しかし千雨さんをその姿で置いていくのは心配ですし」千雨「てめーがやったんだろボケロボッ!!」・・・いいコンビです。
・小太郎「何で俺がこんなチンピラみたいな格好‥」・・・いや、まんまだし。
・千雨「う うるせーな せっかく こんな体型なんだからよ 普段は出来ないコスプレして楽しまなきゃ‥ネ」・・・姉さん、事件です。
・小太郎「誰アンタ 別人や‥」・・・ちうさんです。
・千雨「こりゃいいな 写真残してちうの妹として売り出すか‥‥」・・・ポジティブな奴。
・千雨「まあ とはいえ 先生の可愛い教え子との約束なんです ちゃんとステキな青年を演じてあげるのがいいんじゃないですか」・・・ちょっと丸くなった。
・千雨「わかってねエな‥」・・・千雨、よくわかってる。
・小太郎「フン メンドイなー 約束やし しゃーないか」・・・意外と律儀なコタロー君。
・茶々丸「あ あの‥ 私もこの格好をしなくてはならないのでしょうか」・・・千雨とのペアで、なぜなに○○○○が始まりそうだ。
・千雨「当たり前だろ あんたも面が割れてんだ」・・・まぁ、飴玉のお返しだと思ってくれれば。
・ネギ「カワイイですよ 茶々丸さん」・・・無邪気。
・茶々丸「え‥‥ そ‥そうですか?」・・・ものすごく嬉しそう。
・千雨「やれやれ 保護者のおサルはどこいったんだよ」・・・ホント、どこ行ったんでしょ。
・茶々丸・・・ファイティングポーズ。
・アキラ「変な集団だったね 今の‥‥」・・・さすがアキラ、目の付け所が違う。
・千雨「いいですか先生? あんまりガキっぽいことしないようにちゃんと外見相応の‥」・・・青年に世話を焼く幼女の図。
・ネギ「ハイ! 「紳士的」にということなら任せてください」・・・結局、紳士「的」でしかなかったわけだが。
・千雨「不安だな‥」・・・鋭い。
・ネギ「失礼します こちらに和泉亜子さんがいると伺ったのですが‥‥」・・・開けるの早いよ。
・亜子「ひ‥」・・・そして時は動き出す。
・千雨「あー‥」・・・やっちまった。
・ネギ「ど どうしましょう い いきなり着替えを覗いてしまって‥‥」・・・早速ズレてる人。
・円「!? 亜子! あ‥」・・・釘男君颯爽と登場(違)
・小太郎「ん?」・・・おい止めんな(笑)
・円「るさいっ!! 何やってるのあんた達!!」・・・好みの顔だって殴るぜ。
・ネギ「ス スイマセン 僕の不注意で‥‥‥」・・・ぅぁ、ズレとる……。
・円「何が不注意よ バカじゃない!? いい あんた達 亜子はねぇ 亜子は‥‥ッ」・・・軽くキレてます。
・亜子「釘宮やめてっ ちゃうねん この人ら 何も悪ないねん!!」・・・弁護したいのは察するが、どう贔屓目に見ても悪いと思う(^^;)
・円「あ‥‥亜子‥‥ し、しまった…」・・・我に返る。
・ネギ「い いえっ あの 亜子さん 僕 ただ‥‥」・・・紳士には程遠く。
・亜子「あのっ‥‥ そのっ‥‥ 私‥‥ スイマセンッ」・・・理想には程遠く。
・小太郎「何やあいつ‥‥ 訳わからんわ‥‥」・・・お前はくぎみんを怒らせた。
・円「‥‥ッ 馬鹿ッ」・・・やはり素面では殴れんか。
・千雨「バーカ ガキが 傷だよ 「傷」」・・・わかっててそこまで冷静なのが、千雨。
・小太郎「傷? 傷って今の背中のか? あんなん別に大したことないやん」・・・絶対言うと思ったが、残念ながらニュアンスは最悪だ。
・小太郎「俺の周りじゃ珍しくなかったで 20年前の戦で…」・・・何気に伏線。
・千雨「アホ! お前と一緒にすんな こっちはごくフツーの常識的女子中学生だぞ」・・・さすがの千雨も引いた。
・千雨「ま ウチのクラスは常識ハズレの変人クラスですが そーゆーところだけは他にはない評価すべき点かもしれませんね」・・・ちうとしての意見。
・亜子「最悪や 最悪の再会してもーた!!」・・・不幸な事故だったとは言え……。
・亜子「‥‥もうこんな時間 ウチ‥‥ 何やっとるんやろ‥‥」・・・夢の中でのロマンスの地は、現実世界で絶望の地に。
・亜子「‥‥ 血‥」・・・消えない記憶。
・亜子「戻‥‥らな‥」・・・ユメノオワリ。
・亜子「あっ‥あの人にも キッ 嫌われて‥ う‥ふぐ ラ‥ライブも く 釘宮‥と 桜子とっ 柿崎に ‥‥えっ‥ 何てっ‥‥ あやまったら ‥‥ふえぐっ 何で‥‥ こんなことに‥‥ 何でっ ウチ‥‥」・・・恥ずかしさと、悔しさと、申し訳なさと、無力さと……
・ネギ「亜子さん こんな所にいたんですか みんな探してましたよ さあ ライブ会場に戻りましょうか」・・・現れる筈のない相手。
・ネギ「大丈夫 僕が‥‥あなたに魔法をかけてさしあげます」・・・ステキな青年を演じる君は、何を思い、魔法を使うか。


今週の巻末コメント(と、それに対するちょっとしたツッコミ)

――日焼けして皮がピリピリむけます。

・・・トキメキは常夏。

 頂ければ、管理人が喜びます

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