97時間目「タカミチのホントの本気」


あらすじ

 機先を制したネギは手を休めることなく攻撃を続け、ついには彼独自の技『雷華崩拳』をタカミチに叩き込むことに成功した。

 しかし、一連の攻撃にさして堪えた様子も無く立ち上がったタカミチは、いよいよ逆襲に転じる。

 得意の『居合い拳』で徐々にアドバンテージを奪い、そして、ネギの実力・成長を認めた上で、彼は、少しだけ本気を見せることを表明する。

 左腕に魔力、右腕に気、タカミチが合成した”それ”が叩き込まれた闘技場は完全に破壊され、ネギは、自分の目標のあまりの遠さに、呆然とするのであった。


評価

 ★★★


感想

 む、予想通り(笑)
今回のネギの苦戦に関しては、予想するまでもないことでしたね。
…と言いつつも、「次回のネギの苦戦が楽しみだ。」なんて書いておきながら全然苦戦しなかったらどうしようと内心ビクビクしてましたけど。
それはさておき、ある程度折り込み済みだった展開の中での大きな収穫は、ネギのオリジナル技『雷華崩拳』が見られたことでしょう。
無詠唱の魔法の射手(雷3本)を拳に乗せて思いっきりぶん殴る技でした。
魔法剣士(見習い)の面目躍如と言ったところでしょうか。
現状のネギの格闘攻撃の中では最強の威力を誇るというこの雷華崩拳、見栄えもなかなかです。
これからの彼のメインの攻撃手段になる…かも。

 方のタカミチは、ネギの実力を冷静に分析中。
彼の予想以上の成長ぶりに舌を巻きます。
面白いのは、タカミチがネギの身体の小ささにやりにくさを感じていることが見受けられる点です。
たしかに的が小さくなっているのですから、やりにくいんだと言われれば納得するしかありません。
しかしそれも、非力を補う素早さとバリエーションがあってこそ。
今のことろネギは、師匠たちと自らの才能に恵まれながら、順調すぎるほど順調に成長していることを如実に物語っていると言えるでしょう。
こういう事実を、身内の視点からだけでなく客観的な視点から理解させることで、ネギの成長に関して、ひいては作品全体に関して、説得力を持たせているのだということがよくわかります。
魔法という”説得力のない”題材をテーマの1つに据えている分、説得力を持たせるために色々腐心しているんだなということが端的に窺えて興味深いです。

 題がそれてしまいました。
ネギの雷華崩拳がモロに入って場外に弾き飛ばされるタカミチでしたが、多少ダメージは受けているものの、さして堪えてはいない様子。
あまつさえ水の上を歩いたりしちゃってます。
おいおいそれは無茶だろと最初は千雨ばりに突っこんだものですが、ここではタカミチの超人ぶりを表しているのだと解釈するのが吉でしょう。
さりげなく、次元の違いをアピールしています。
雷華崩拳を決めるのにエネルギーを費やして消耗しつつあるネギとは対照的に、タカミチはまだまだ余裕の表情。
ここから彼の怒涛の、そして静かな――反撃が始まるのです。

 敢に接近戦を挑むネギに対し、一瞬の隙を衝いて彼を引き離すタカミチ。
ポケットに手を入れて戦闘態勢に入った彼が繰り出したのが、見えない打撃、そう、『居合い拳』です。
ついに攻守が逆転しました。
ネギは再び距離を詰めようとするも、瞬動の弱点を突かれて近付く事もままならず。
おまけにタカミチまで瞬動術を用いたことで、精神的な優劣の差までが顕在化してきました。
いよいよ進退窮まったネギに語りかけるタカミチ。
その内容は、自分に居合い拳を教えたのが、ナギの仲間であり、自分の師匠であったというもの。
写真に写っていたあの人物はタカミチの父親ではないのかという疑義を挟む事すら憚られるほどに感慨にふけった後、「僕の本当の本気を少しだけ見せよう」と言います。
彼の感慨が如何ほどの、そして、どのようなものなのかはここでははっきりと語られてはいませんが、それでもわかるのは、彼がネギのことを一人前の男として認めたことと、まだ全然本気ではなかったこと、です。

 たれたのは、『魔力』と『気』が合成された、特大の一撃。
また会場が壊れました。
『上』の存在ははるか遠くに存在することを示唆するタカミチ。
そして、タカミチの実力と、彼が静に語る現実に、呆然とするネギ。
さて、どう出る?

 回の内容は、こんな具合でした。
”溜め”の回なので、単体での面白さは標準的と言っていいでしょう。
前回と違うのは、楽しみどころが一本道ではないところ、とでも言いましょうか。
観戦客のリアクションだけでも、かなり楽しめると思います。
一番目に付くのは、やはり千雨でしょう。
会場の中でほぼ唯一と言っていいほどの「一般人」である彼女が、現実離れしたこの戦いを、ショーに過ぎないんだと断じながらも、ネギの真剣な戦い様を見るにつけてその考えを改めつつあるというのが、よくわかります。
今回の千雨を通じて読み取れるのは、、彼女がいわゆる「ファンタジーの世界」を否応無く突きつけられているということ、そして、彼女のネギを視る目がもはや他人に向けられるそれとは明らかに異なっている、という事実です。
ありえない現実へのツッコミ役を果たしつつ、彼女自身が何か変わりつつあるさまを如実に見てとることができ、かなり興味深いです。
こういう贅沢なキャラの使い方も、登場人物が多いからこそできることなんですよね……。

 に見てて楽しいのは、魔法使いのおねーさんこと、高音・D・グッドマンさんですね。
今回は一言もセリフが無いのですが、彼女が気になって仕方ありません。
それは、私の個人的嗜好というよりは、彼女が2回戦で当たるのがネギvsタカミチの勝者であるという観点からです。
こうも次元の違う戦いを、迫りくる恐るべき未来を前提として見せられたのでは、一言も喋れないのも道理というものでしょう。
あとは解説の豪徳寺君。
タカミチの使う居合い拳を解説しているのですが、「実際にやってるバカを見たのは初めてです」とか言ってます。
この愛憎入り交じった地味なセリフが、今回一番ツボに入りました。
それにしても、『居合い拳』って絶対『居合い抜き』とは性質を異にしている様な気がするのだが、どうか。
だって、鞘にあたるはずのポケットは実際の刀の鞘とは逆の方向を向いているわけですし(笑)
いやいや、きっとそれも超人的な原理で克服しているのだろうと解釈してますが。
そういう意味も含めて、大豪寺君は”バカ”だと言っているのでしょう。
文献って一体……w

 う1つ面白いのは、楓がネギの実力の高さに驚いているところ。(「ネギ坊主 これ程とは・・・」)
麻帆良学園にやってきてから一番最初の師匠と言っても差し支えないであろう彼女の驚きも、ネギの成長を裏付けています。
彼女の登場を熱望している読者は多いはずなんですけど、ここのところは意外に接点がありませんね。
彼女の出番、もう少し増えないものでしょうか。
6巻の楓の「今はまだ拙者の方があのネギ坊主よりも強い」というセリフを考慮すると、ネギの実力が彼女の実力に肉薄した段になって、大きくクローズアップされるのかもしれませんが……もどかしいですね。

 後に、全体的傾向として、タカミチが場外に吹っ飛ばされても(千雨以外)誰も心配していないのがかなり素敵だと思いました。
逆にタカミチが新気功砲(仮)を放った瞬間、あの千鶴すら呆然としている様子も、同じく素敵でした。
それにしても、『魔力』と『気』は相反する性質を持っているために併せて使うには相性が良くないとの事前裏情報がありましたが、鍛錬次第では、全くそんなことはなかったですね。

 の状況、ネギは打開できるのか。


今週の巻末コメント(と、それに対するちょっとしたツッコミ)

――最新鋭パソコン買った! ハードディスク1.6TB(テラバイト)。未知の世界へ……。

・・・ええい 連邦のモビルスーツは化け物か!

96時間目  98時間目  ネギま!レビュー  トップページ

inserted by FC2 system